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事実と虚構とのはざま [その他(雑感など)]

先日、たまたま俵 万智さんの『短歌をよむ』という本を読んだ。

短歌をよむ (岩波新書)

短歌をよむ (岩波新書)

  • 作者: 俵 万智
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1993/10/20
  • メディア: 新書



なかなか面白かったのは、彼女の有名な作品

  「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 

という歌について述べているところ。
実は、この歌が生まれるきっかけとなった現実の出来事としては「サラダ」ではなく、「鳥のからあげ」であり、日にちも七月六日ではなかったというのである。
最初にできた歌は

  カレー味のからあげ君がおいしいと言った記念日六月七日

であり、それが

  「カレー味がいいね」と君が言ったから今日はからあげ記念日とする

となり、さらに

  「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

となったというのである。

彼女は「短歌は、言葉による表現である。日記や身の上話とは違う」といい、「全部がほんとうではないし、全部が嘘でもない。心の揺れは、たしかにほんとうに私の心に宿ったもの。けれど、それが言葉というかたちになる過程では、現実から離れてゆくこともある」と述べている(同書128~133頁)。

文学作品の本質を言い表した好例であろう。
作品は、あくまでも「作品」なのである。
事実と虚構とのはざま・・・「作品」の世界はそんなところにあるのかもしれない。
虚構を事実であるかのように読者に感じさせるのは、まさに作者の筆力なのであろう。
そしてそれが「作品」の面白さを創り出しているのかもしれない。

(ちなみに俵万智さんと保阪嘉内はともに竹柏会の会員です)
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