保阪嘉内 弟への手紙

保阪嘉内が書いた手紙は保阪家のお蔵にたくさん残されています。
また嘉内に宛てた手紙も残されています。
私たちも三度に渡り、ほこりだらけになって調査をしましたがまだ分析しきれていません。
賢治からの手紙は残念ながら新しいものは発見されませんでしたが、小菅健吉氏、河本義行氏、盛岡高等農林の関係者などの手紙も新たに発見されています。
嘉内が書いた手紙は圧倒的に父善作に宛てたものが多いですが、兄弟や我が子に宛てたものも見つかっています。
今回は弟次郎に宛てた葉書です。
次郎は保阪家の次男で嘉内の１６歳年下になり、嘉内と次郎の間には４人の妹がいます。

この葉書は盛岡高等農林を除名された翌年の１９１９年（大正８年）、嘉内２３歳の時の１２月２１日付けの消印です。
嘉内は、この年１２月１日から一年志願兵として、陸軍近衛輜重兵大隊に入営しています。
弟を思う嘉内の気持ちが表れている、いい手紙だと思います。

マイニチガッコウニイッテイマスカ。 モウオセウガツガチカクナッテウレシイデセウ。 ニイサンハヘイタイサンニナッタノデオセウガツハコトシハグンタイデスルノデス。 モウ、ウマニノルノガタイヘンジャウズニナリマシタヨ。 サムクナッタカラカラダヲダイジニナサイ。

このようなことが書かれています。

　

賢治は近衛輜重兵大隊の嘉内に１４通の手紙を書いています。
兵隊として活躍する嘉内に対して家業を手伝い、忸怩たる思いで生活する賢治は嘉内を心配したり羨望の眼差しで見たりしています。
次郎には「馬に乗るのが大変じょうずになった。」と報告していますが、賢治は心配して「保阪志願兵はもう馬にはよく乗れますか」「いかにもあなた方は始終馬に乗っているのですな」など、馬についての話題を投げかけています。
そして馬についての短歌を書いたりしています。
次郎に宛てた愛情あふれる手紙に対して、賢治にはどんな内容の手紙を送ったのでしょう。知りたいところです。

次郎は嘉内亡き後の父善作の期待を一身に担っていましたが、昭和１９年１１月１日ニューギニア島セベック州ブーツで戦死します。
ひたすら次郎の帰りを待っていた善作でしたが、その公報を受けとったのが昭和２２年１２月、悲嘆にくれ翌年には嘉内の長男である善三に家督相続し、昭和２４年１月に病死します。

（記：むこちゃん）

コメント 5

心を打たれる手紙ですね、私はこういう家族を思う、飾りのない手紙が本当に好きです。中学校の修学旅行のとき、見学先で野口英世の母が英世に送った手紙を読んで、大勢の友のいる前なのに、号泣した事を思い出しました。手紙はその人を表しますよね。
　賢治から嘉内への手紙を通しても、賢治の不器用なまでにまっすぐな法華経への思いを感じました。また、女性として魅力的だと思ったのは、さかえ夫人が小沢俊郎氏へ送った手紙の下書きです、（詳しくは『心友宮沢賢治と保阪嘉内』大明敦　編・著を読んで下さい）心が細やかで、理知的なさかえ夫人の人柄が表れていると思いました。この方にも会ってみたかったですね。嘉内の手紙、もっとみたいです。
でも少しプライバシー侵害かも・・・
　
　
by akatuki (2008-04-09 00:21) 

２００７年１２月の寒い日、嘉内の生家の蔵の中でこの手紙を見つけた時、息を呑みました。まだ幼い弟へを思いやる気持ちに、心打たれました。
大正５年の「短歌日記」にはたくさんの歌が綴られていますが、３月１０日のところにこんな歌があります。
　　わらべらの小さき飛行機風かすめ曇りし空にまひのぼりけり、
弟への手紙を見つけた時、心の中にこの歌が浮かびました。

嘉内には、強い意志や理想を持ち、どんな環境にも適応力がある強い人・・・といったイメージが強いですが、その心の中には優しくて細やかな面があったことと思います。
さかえさんも、そんなところに惹かれたのかも？
嘉内の新発見の手紙の公開、またむこちゃんに骨をおってもらいましょう。
by azalea (2008-04-09 07:38) 

追伸（？）です。
１２日は当麻戸神社のお祭りだそうですね。
むこちゃんと一緒に行ってみようと思っています。
今度はakatukiさんにもお目にかかれるとよいのですが・・・。

by azalea (2008-04-09 07:42) 

思い出の手紙が沢山残っている事が素敵ですね。

私はなにも残っていません、

今亡き弟を思い天国の弟に手紙かいてます。
by 影山　彰 (2011-04-27 16:15) 

保阪嘉内が賢治に宛てた手紙も、残っていればよかったのですが……。
１通でも見つからないものでしょうか。
by azalea (2011-04-27 19:48)