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河本義行の遺品・遺稿の保存と修復 [研究に関すること]

「アザリア」刊行から90年……。
時の流れはさまざまなものを風化させていきますが、紙の劣化も招きます。
図書館・文学館そして文書館……といった施設に関わりのある方や紙資料の保存に関心のある方なら私が何を話題にしようとしているのか、既にお気づきのことと思います。
それは酸による紙の劣化、スローファイヤーと呼ばれる現象です。
かつて、洋紙を作る際にインクのにじみを防ぐために硫酸アルミニウムを混ぜていました。
ところが、この硫酸アルミニウムを含んだ紙は、その酸がパルプの繊維を壊す性質を持っているため、時間がたつと紙がぼろぼろになってしまうのです。
日本では、明治時代の後期から昭和20年代ごろまでに生産された紙に特に顕著に見られる現象です。
火事のよう一気に資料を灰にしてしまうわけではありませんが、じわじわと資料を蝕んでいき、気が付いた時にはボロボロ……。
酸による劣化は、紙資料にとって生活習慣病のように恐ろしいことなのです。
(その点、和紙は硫酸アルミニウムのような物質を含んでいないのでスローファイヤーの心配はありません)

「アザリア」の友たちの貴重な遺品や遺稿の中にもスローファイヤーは進行しています。
保阪嘉内の遺稿や遺品も酸による劣化が進んでいるものや、心ない人によって手荒く扱われたことによる破損がたくさんあります。
こうした劣化や破損が目立つ資料の保存は、私たちにとって大きな課題となっています。

鳥取では、紙資料修復家の秦博志さん(鳥取県西伯郡南部町在住)が河本緑石研究会の依頼を受けて河本義行の遺品・遺稿の修理と保存処理を行っているそうです。

去る10月28日(日)、文字・活字文化の日を記念して、秦さんの講演会が鳥取県立図書館で行われました。
詳しくは、鳥取県立図書館のサイト
http://www.library.pref.tottori.jp/event/kouenkai-ryokuseki.html
をご覧ください。
(質疑応答の時間は、緑石研究会のPRの時間のようになったそうですが……。)

河本緑石の遺品・遺稿の修理と保存処理については、秦さんのブログ「HATA STUDIO」に画像入りで詳しく紹介されています。
賢治から贈られた『春と修羅』『注文の多い料理店』、『大空放哉伝』の自筆原稿、そして「アザリア」などの状況を見ることができます。
(「アザリア」については新しい発見もあります!)
http://hatastudio.exblog.jp/

河本緑石研究会については下記をご覧ください。
http://www.city.kurayoshi.tottori.jp/p/gyousei/div/kikaku/sankaku/3/3/6/


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