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映画「グスコーブドリの伝記」 [ビデオ・映画・CDなど]

7月7日から、待望の映画「グスコーブドリの伝記」の公開が始まりました。

グスコーブドリの伝記ちらし.jpg

近くの映画館で初日に見たのですが、あまりネタバレになってもなぁ・・・と記事を書くのをしばらく控えていましたが、そろそろいいかなと思い少し感想を書いてみます。
既にいろいろな方がブログやツイッターなどで書かれているように賛否両論あると思います。

映画を見終わって、大雑把に3つのことを考えました。
一つ目は、これを映画の1作品として見た場合です。
映画としてはある程度の興行成績をおさめなければならず、いわゆるウケを狙ってさまざまな技術も駆使されます。
さすがに映像はきれいですが、個人的にはCGの動きがうるさすぎに感じました。
ジブリを意識したのでしょうかねえ・・・映画館で漏れ聞こえてきた感想によればジブリのアニメだと思った人もあったようです。
やはり「銀河鉄道の夜」のような落ち着いた感じの作りの方がよかったなあ、というのが正直な感想です。
映像も、音楽も。
あと何回か画面左の上の方にかなり大きな黒い丸がしばらくの間(といっても1~2秒ほどでしょうが)現れる〔注〕のが、映像がきれいだった分よけいに気になりました。
〔注〕 葵桂さんのコメントで、フィルムを替えるタイミングを示すマークであったことがわかりました。デジタルだと思っていたら、フィルムの上映館で見ていたようです。

二つ目は、いわゆる賢治マニア・・・として見た場合です。
「グスコーブドリの伝記」はもちろんですが、そのほかにもさまざまな賢治の作品があちこちに取り入れられています。
その必然性があるかないか、といったことを考えないで「グスコーブドリの伝記」を中心にした賢治作品のコラージュだと思えば、「おお、ここでこれか」という感じで、それはそれで一つの楽しみ方ができます。
(もちろん、それがいいかどうかは別として)
声優陣も、林隆三さんや桑島法子さんといった賢治作品の朗読に取り組んでいる方を配するという、マニアックなキャスティングがなされています。
そういう意味では面白く感じましたが、賢治作品に詳しくない人が見た場合「なんのことだか、わけのわからない」と感じてしまうのではないでしょうか。
いわゆる賢治ワールドを描こうとしたのだろうと推察しますが、マニアックになりすぎて制作者の自己満足のような印象を受けました。

三つ目は、「グスコーブドリの伝記」の愛読者として見た場合です。
これは、はっきりいって原作を元にした別の作品というべきでしょう。
この映画を見ることで初めて「グスコーブドリの伝記」を知った人が、原作もこういう話だと受け取ってしまうのでは?・・・と、余計な事かも知れませんが気になりました。
結構「ここが大事なところでは?」と思うようなところが省略されていたり、「これが必要か?」と思われるようなシーンが挿入されていたり、「こんな感じではないぞ」と思うように書き換えられていたりします。
(ネタバレになるので、細かい内容は伏せます)
まあ、賢治作品の解釈は人によって違いますし、一種の〝本歌取り〟だと思えばよいのでしょう。
「銀河鉄道の夜」のシナリオは原作に忠実なものでしたが、「グスコーブドリの伝記」は賢治さんの原作を元にしながら監督の杉井ギサブローさんの解釈で再構成したもの(つまり「グスコーブドリの伝記」を素材とした一つの映像作品)といった感じでしょうか。
もっとも、1994年に賢治没後60年を記念して作られた「グスコーブドリの伝記」(監督・脚本:中村隆太郎)が原作に忠実であっただけに、杉井ギサブローさんとしては同じようにはできないという意識もあったかも知れません。
でも、個人的には原作に忠実であったほしかった・・・と思います。
そこが一番残念です。
原作に忠実であるからこそ賢治さんについてくわしい人も、はじめてその作品に接する人も、それぞれに楽しむことができるのではないでしょうか。
1985年公開の「銀河鉄道の夜」(監督:杉井ギサブロー、脚本:別役 実)は、だからこそ多くの人に支持され、制作から25年以上過ぎた今なお根強い人気がある作品となっているのではないでしょうか。

期待が大きかっただけに、どちらかといえば辛口な感想になってしまいましたが、いうまでもなく原作も映画も人によってそれぞれに評価は異なります。
映画の場合、ストーリーだけでなく視覚的・聴覚的な部分も含めて受け取る情報量が大きいので、評価は原作以上に大きく別れることでしょう。
ネット上では「金返せ」といった露骨な悪評も多数見うけられますが、一方で「良かった」と絶賛する人もあろうかと思います。
ここに書いたことも、単なる一個人の感想にすぎません。
気になる方はぜひ一度映画をご覧になってみてください。

いずれにせよ話題にはなりましたので、そのうち宮沢賢治学会が杉井ギサブローさんにイーハトーブ賞を出す(ますむらひろしさん、桑島法子さんは受賞済)のではありますまいか。
それもまたイーハトーブ賞をPRする上での一つの話題づくりとなりましょう。


以下、参考までに。
<グスコーブドリの伝記>杉井ギサブロー監督×ますむらひろし対談「ブドリはネコじゃない」?
杉井ギサブロー監督が語った「今の世界に送るブドリの物語」

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コメント 2

葵桂

>あと何回か画面左の上の方にかなり大きな黒い丸がしばらくの間(といっても1~2秒ほどでしょうが)現れた
それはフィルムを変えるタイミングを教えるやつではないですか?

どんな映画にも大抵、ありますが…
by 葵桂 (2012-07-22 14:56) 

azalea

ああ、なるほどパンチマーク(チェンジマーク)というやつですか。
そもそも映画はあんまり見ない上、もう何年もデジタルでしか見ていなかったので、そういうものの存在をすっかり忘れていました。

今回もDLPだと思いこんでいたのですが、調べてみると確かにフィルムの上映館で見ていたようです。

by azalea (2012-07-22 17:45) 

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